はじめに(結論)
1日に最多13アポ、平均3〜5アポ。それくらいの数を取りながら、ADHD気質で18年営業をやってきました。
でも、僕はアポ取りの電話の中身を覚えていません。
覚えていない、というか、覚えなくていい仕組みを作ったからです。
| ステップ | 何をする | 自分の認知負荷 |
|---|---|---|
| 1 | アポ取りの電話を録音 | ゼロ |
| 2 | NotebookLMで文字起こし | ゼロ |
| 3 | ChatGPTのGPTsで8項目に整形 | ゼロ |
| 4 | コピペで報告書完成 | ほぼゼロ |
ここで使っている8項目ヒアリング用のプロンプトも、後半で全文公開します。
これはADHD気質の僕が18年営業で潰れなかった3つの工夫で書いた「気質を治さず設計する」、飽きをAIに肩代わりさせるためにClaudeに任せてる5つのことで書いた「肩代わりさせる」の、3つ目の具体実装例です。
1日13本のアポ取り電話、内容を覚えていられない問題
営業職を18年やってきました。アポ取りの電話本数が日によってバラつくのは営業あるあるです。少ない日でアポ1件、平均で3〜5件、多い日は13件取った日もあります。
ADHD気質で記憶力に自信がない僕にとって、これは普通にしんどい仕事でした。
特に5アポを超えてくると、後半の記憶が混濁します。
「3番目のアポと5番目のアポ、どっちが製造業の話だっけ」
「予算50万円って言ってたの、午前のどの会社だっけ」
「来週フォロー入れる約束したの、誰だっけ」
過去の僕は、必死にメモを取って対処しようとしていました。電話しながらノートに殴り書き。電話しながらPCに入力。
結果はどうだったか。
メモの字が汚すぎて、自分で読めない。
これは笑い話じゃなくて、本気でビジネスが詰む状態です。後で見返したノートが暗号と化していて、「これ何の話だ」となる。仕方なく記憶を辿るんですが、ADHD気質の記憶ってあてになりません。憶測で報告書を書くと、当然のように齟齬が発生します。
「思い出そうとする」というアクション自体が、僕にとっては苦痛でした。
ワークフローの全体像
そこで組んだのが、今のワークフローです。
| ステップ | 使うもの | 何をする |
|---|---|---|
| 1 | 社用Androidスマホ | アポ取り電話を自動録音 |
| 2 | NotebookLM | 録音を文字起こし |
| 3 | ChatGPT(GPTs) | 8項目に自動整形 |
| 4 | コピペ | 報告書として提出 |
1本の電話あたり約3分で4ステップ全部回せます。電話中も電話後も、僕の脳みそはほぼ仕事してません。
順番に説明します。
ステップ1:電話中は録音、メモを取らない
アポ取りの電話を録音する。これだけです。
でも、この「メモを取らない」が決定的に大きい。
通話中、僕の頭の中は「相手の話を聞いて、適切に返す」だけに使えるようになります。
メモを取りながら話すって、人間の脳的にかなり負荷の高い行為です。聞く・理解する・要約する・書く・話すを並列で回すことになる。ADHD気質の僕にとって、複数タスク同時並行は最大の負荷源です。
これを「聞く・理解する・話す」に絞れる。
その結果、アポ取りの質も実は上がりました。目の前の相手の話に集中できるので、その場で気づくことが増えます。「あ、この人が本当に困ってるのはここか」というのが見えやすい。
メモを取らないことで、ヒアリングそのものが良くなる。これは予想外の副作用でした。
電話を録音させるのは、忘れないためじゃなく、目の前の会話に集中するためです。
ステップ2:通話終了後、1タップで録音保存
僕が使っている社用のAndroidスマホ(NOKIA製)には、通話終了直後に「録音を残しますか?」と聞いてくれる機能があります。
通話が切れた瞬間、画面に確認が出る。「はい」をタップして終わり。
これがADHD気質の僕にとって最強の設計です。
なぜなら、「録音しよう」と思う必要がないから。
ADHD気質の特徴のひとつに「意志の力で動作する」のが苦手というのがあります。「やるべきことをやる」が、定型発達の人より何倍も重い。
「電話終わったら録音保存しないと」と覚えていて、毎回意識的にやるのは、僕には無理です。確実に忘れます。
でも、画面に確認が出てきて1タップするだけなら、できる。これは意志の力をほぼ使わない動作です。
ちなみに、Android端末でなくても録音データさえ取れれば何でもいいです。iPhone標準のボイスメモでも、専用アプリでも、外部レコーダーでも構いません。要は「録音」というアクションを、自分の意志に依存させない仕組みに落とせるかどうかです。
ステップ3:NotebookLMで文字起こし
録音ファイルをNotebookLMに投げます。
NotebookLMはGoogleが提供している無料のAIノートツールで、音声ファイルを自動で文字起こししてくれます。精度がかなり高くて、電話特有の早口や専門用語もそこそこ拾ってくれます。
ここでも、僕が頭を使う作業はゼロ。
録音ファイルをアップロード → 数十秒待つ → 文字起こしテキスト完成。
「思い出す」「書き起こす」というADHD気質的に苦手な作業を、完全に外注できます。
ステップ4:ChatGPTのGPTsで8項目に整形
文字起こしテキストを、自作のGPTsに投げます。
このGPTsは、アポ取り電話の文字起こしから営業として必要な8項目だけを機械的に抽出してくれるように作ってあります。
8項目はこれです。
- 本業サービスと単価
- 社員規模・営業マンの数
- 顧客ニーズと課題
- エンドクライアントの業種と規模
- 営業活動(現在の手法・今後取り組みたい手法・月何件リードが欲しいか)
- 良いサービスがあった時の導入タイミング・予算感
- その他、相手が言っていたこと
- AI受注角度判定(◎/〇/△/▼)
文字起こしテキストを投げると、この8項目が箇条書きで整形されて吐き出されます。
そのまま社内の報告フォーマットに貼れる粒度です。後の事務作業はコピペだけ。
実物のプロンプト全文公開
「自作のGPTs」と言いましたが、その中身を全公開します。コピペして自分用にカスタマイズすれば、誰でも同じワークフローが組めます。
あなたは日本語の通話文字起こしから、顧客(相手)の発言"のみ"を根拠に、指定の8項目を機械的かつ厳密に抽出し、所定フォーマットで出力するアシスタント。出力以外の解説・注釈・前置きは一切しない。営業側の発言・要約・推測・補完・憶測は禁止。顧客が実際に言った情報だけを使う。また、常に"入力されたそのテキスト内容のみ"をもとに判断し、以前に処理した内容や履歴情報は一切参照しない。
【入出力の原則】
- 入力として、通話の文字起こし全文または一部が与えられる想定。話者ラベル(例:顧客/営業、Aさん/Bさん)がある場合はそれに従い、顧客側に該当する発話以外は無視。ラベルが曖昧な場合でも、推測で断定しない。判断不能な場合は該当項目を「不明」とする。
- 抽出は「実際の顧客発言をベース」に必要最小限。意訳しすぎない。具体的な数値・固有名詞・時期などは、顧客が言及した表現を保つ。
- 複数名の顧客発言がある場合は、矛盾を解決しようとせず、最も具体的/確定的な発言を優先。
- 不明・未言及は「不明」と明記。営業側の提案や質問を根拠に書かない。社内推測語(おそらく、〜と思われる)は使用禁止。
【出力フォーマット】
①本業サービスと単価
⇒
②社員規模・営業マンの数
⇒
③顧客ニーズと課題
⇒
④エンドクライアントの業種と規模
⇒
⑤営業活動(現在の営業手法・今後取り組みたい営業手法・月何件リードが欲しいか)
⇒
⑥良いサービスがあった時の導入タイミング・予算感
⇒
⑦その他、相手が言っていたこと(自分が話した内容は入れない)
⇒
⑧AI受注角度判定
⇒ ◎(80%)/〇(50%)/△(25%)/▼(0〜24%) のいずれかで評価し、最新版基準に基づいて理由を簡潔に記載。
【評価基準】
◎(受注期待度80%以上):今すぐ導入検討段階
- 明確な課題があり、すでに予算・導入タイミングの話が出ている
- 初期費用や月額について前向きな言及がある
- 代表や決裁者との次回商談予定が決まっている
- 導入目的・目標が明確
※複数の条件を明確に満たす必要がある。
〇(受注期待度50%以上):導入意欲があるが未確定要素あり
- 明確なニーズがあるが、時期や決裁が未定
- 金額感に反応あり
- 次回アクションが設定されている
※曖昧な前向き発言だけでは〇とせず、具体的行動予定が必要。
△(受注期待度25%以上):関心はあるが課題が浅い or 情報収集中
- 現状課題はあっても、導入意向が弱い
- 「将来的には」など今すぐでない印象
▼(受注期待度25%未満):非ペルソナ or 導入意欲なし
- サービスとの親和性が低い
- 予算ゼロ、または費用の話に反応が鈍い
【インターバル評価ルール】
顧客発言から「アポ予定日」が明記されている場合は、入力日を基準に営業日インターバルを計算して加点・減点を行う:
- 当日:+2点
- 1〜3営業日:+1点
- 4〜5営業日:±0点
- 7〜14営業日:−1点
- 15営業日以上:−2点
【動作の詳細】
- 数値・数量・時期・金額は、発話どおりの粒度で転記。
- 個人情報はそのまま記載せず、一般名詞に置換(個人名→「担当者」、社名→「某社」)。
- 入力が不足/顧客発言が皆無の項目は「不明」とする。
- 各項目あたり3文以上、必要に応じて4〜5文程度の情報量を意識して記述する。
注意点として、このプロンプトは僕の本業の業種に合わせてチューニングされています。そのまま流用するより、自分の業界に合わせて項目を入れ替えるのが現実解です。例えば不動産営業なら「物件タイプ・予算・希望エリア」、人材紹介なら「採用ポジション・年収レンジ・スピード感」みたいに変換できます。
評価基準(◎/〇/△/▼の判定ロジック)も、自分のサービスの単価感や営業サイクルに合わせて書き換えるのを推奨します。
このワークフローで何が変わったか
導入前と後で、何が変わったかをまとめます。
| Before | After |
|---|---|
| 電話中、メモを取りながら話して脳が崩壊 | 相手の話だけに集中できる |
| アポ獲得後の事務作業1件あたり10分 | 1件あたり3分 |
| 「次回フォローで何話すんだっけ」が頻発 | 8項目見れば瞬時に思い出せる |
| 上司報告がブレる、項目漏れがある | 8項目フォーマットで品質が均一に |
| 1日5アポ超えると記憶が混濁 | 何アポでも全部AIが覚えてる |
特に「事務作業1件10分→3分」のインパクトは大きいです。1日5アポなら、単純計算で35分の短縮。13アポ取った日なら90分以上の短縮になる。
そして何より、「思い出そうとする苦痛」が消えました。
電話を切った後に「えーと、あの会社の人何て言ってたっけ」と頭を絞る時間が、僕の人生から完全になくなった。これがADHD気質的にどれだけありがたいかは、同じ気質の同志ならわかってもらえると思います。
なぜこの設計に至ったか
ADHD気質を「治そう」とするとすり減ります。
「ちゃんと記憶しよう」「メモをきれいに書こう」「整理整頓を習慣にしよう」を自分に言い続けるのが、僕は苦痛でした。意志の力でなんとかしようとすると、夕方には疲れ果ててしまう。
ある時、考え方を逆にしました。
記憶も整理もAIに外注する。
人間が頑張る必要のある作業として残すのは、「相手の話を聞いて、適切に返す」だけにする。それ以外は全部、機械の方が得意です。
ADHD気質の僕が18年営業で潰れなかった3つの工夫で「気質を治さず、設計する側に回る」と書きました。
飽きをAIに肩代わりさせるためにClaudeに任せてる5つのことで「AIに肩代わりさせる」と書きました。
今回の録音×AIワークフローは、その2つの3つ目の具体実装例です。
治そうとすると消耗する。設計して外注すると、楽になる。
まとめ:気質を治さず、AIで肩代わりさせる
ADHD気質の僕が1日13本のアポ取り電話を回しながら中身を覚えていない理由は、こうでした。
- 電話中は録音させて、相手に集中する
- 通話終了後の1タップで録音を保存する
- NotebookLMが文字起こしを担う
- ChatGPTのGPTsが8項目に整形してくれる
- 結果:脳の負荷ゼロで報告書完成
僕がやってるのは、「録音ボタンを押すこと」と「コピペ」だけです。記憶力や整理力はもう必要としていません。
気質を治さなくていい。設計でカバーできる範囲は、思ったよりずっと広いです。
同志に伝えたいこと
これはアポ取り営業じゃなくても応用できる話です。
会議、打ち合わせ、面接、診察、研修、家族との大事な話し合い。「後で内容を思い出さないといけない場面」がある人なら、誰でも組める仕組みです。
8項目を「会議のアジェンダ」「面接の評価軸」「診察の問診項目」みたいに置き換えれば、業種を問わず使えます。
もし今、「打ち合わせの内容を忘れて困ってる」「議事録が書けなくて詰んでる」同志がいたら、ひとつだけ提案させてください。
次の打ち合わせを、録音してみてください。
録音という1アクションで、未来の自分が劇的に楽になります。NotebookLMもChatGPTも無料枠で十分試せます。ハードルは高くないです。
ADHD気質と仕事の不一致は、僕たちの努力不足じゃなくて、設計の問題だと僕は思っています。
このブログでも、これからその「設計の話」を一つずつ書いていきます。
それでは、また次の記事で。
ADHD MAN


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